新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が学校の一斉休校を要請したことをきっかけに、これまで封印されてきた休暇の問題が表面化する結果となりました。どのような時に労働者は休暇を取れるのか、明文化していく必要があるでしょう。
学校が一斉休校になった場合、子どもが小さく、かつ親が共働きだったり、1人親世帯だった場合には、仕事をどうするのかという問題が必ず発生します。政府は当初、この問題をあまり真剣に考えていなかったようで、休校措置の発表後、各方面から疑問の声が上がったことから、慌てて休業補償の措置を発表しました。
しかしながら、現実はかなり厳しく、非正規社員の場合には休んでしまうと契約が更新されない可能性があるので休めない、あるいは正社員であっても会社から事実上、有給休暇を消化するよう求められるケースなど、労働者が不利益を被っている例がたくさんあります。
同じく学校の休校措置を実施しているフランスでは、両親のうちどちらかは、政府が給料を補償すると政府が明言し、家賃の支払い延期などの措置も同時に発表されたことから、大きな混乱はなかったようです。また家庭でも授業が継続できるよう、各家庭にオンライン学習サイトに登録するよう指示が出ているそうです。
フランスがこうした措置を実施できるのは、どこまでが労働者の権利で義務なのか、日頃からルールとして明文化していることが大きいと思われます。
フランスは年間30日の有給休暇が定められていますが、旅行会社エクスペディアの調査によると、同国での取得率は100%となっています。一方、日本は年間20日の有給休暇が定められていますが、実際の取得率は50%となっており、調査対象の19カ国中最低ランクです。
日本でも法律上は、有給の消化は労働者の権利であり、100%消化しても何の問題もありませんが、現実に有給を消化するのは難しいようです。
今回の一斉休校に際して、安倍首相が企業に対して「有給休暇を取りやすいように対応をお願いする」と発言して波紋を呼ぶという出来事がありました。この発言の真意は不明ですが、無意識的に有給というのは当然の権利ではなく、こうした非常時のために取っておくべきものという価値観が政治家の頭の中にあるのかもしれません。労働者はどのような時に休みを取れるのか、ルールをもっと明確にし、裏ルールなどの存在を許さないような社会にしていかなければ、本当の意味での働き方改革は実現できませんし、こうした非常時にもうまく対応できないでしょう。
(The Capital Tribune Japan)
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース